top of page

5歳児はピアノを始めるにはまだ早い?

更新日:2022年10月27日

ピアノの先生探しから始まり、その後何千回も経験する「どうしよう…」。これが私の最初の「どうしよう…」でした。


ree

 5歳半になった我が子、モーたんが「ピアノを習いたい」と言い出したのは我が家に電子ピアノが届いた当日でした。


 私はその昔、ちょっとだけピアノをかじっていた為、久々に何か弾いてみたくなりました。とは言うものの、子供達もまだまだ小さく、今後も何かとお金がかかるということで、楽器購入予算もかな~り限られたものとなり、通販で一番安い電子ピアノを購入しました。


 届いた電子ピアノはまるで『家電』にアップグレードされた昭和時代の足踏みオルガンのような体裁。要するに真剣にピアノに取り組まれている方には、多分、楽器として認めてはもらえないような代物であったわけです。

ree

 子供が「習いたい」と言い出した時に思ったのは、「やったぁ~!ガッツポーズ付き)」。 願わくばママがピアノを弾いている影響で、そのうち子供の方から自然な感じで「…ピアノ弾きたいな…」と言い出すように仕向けようと、様々な作戦を思い巡らしていたわけですが… ふっふっふ。お子様の方から飛び込んできてくれるなんて、これはかなりツイている。「そのうちに一緒に簡単な曲が連弾できたりすれば楽しいなぁ~」と妄想は勝手に膨らみます。


  早速インターネットで地元のピアノの先生を検索。こんなに早くピアノの先生を探す必要になったことは予定外でしたし、そんなこんなで、こちらの予算も非常に限られておりました。『どれくらい続くのか…』という素朴な疑問に加えて、そもそも基本的な問題として、この5歳児が真剣にピアノを習いたがっているのかは全く分かりません。明日になれば忘れているかも… 自分の昔のことを考えると、最初は良かったけど、曲が進むにつれ、また学年が上がるにつれて練習が辛く、いつも『辞めたいなぁ~』と考えていたことを思い出します。レッスンを初めて数か月で『辞めさせてください』というのは、お願いした先生に大変失礼になりますし、出来れば避けたいものです。


 「子供が本気かどうか分かるまで親が教えては?」というアドバイスも頂いたのですが、以前、周りの『実際に子供にピアノを習わせた』経験をお持ちの先輩方にリサーチをしたところ、「絶対に親が自分の子供にピアノを教えるべきではない!良くて『親子喧嘩』、悪くて『子供がピアノを辞める』」と散々聞いていたため私が教える選択肢は最初からありませんでした。


 そんなものなのですね。でも、モーツァルトやベートーヴェン、リスト…と、歴史、そして現代においてもその名を轟かすピアノの巨匠達は親御様に手ほどきを受けたと見聞きしたような気がしましたが…。ま、そんな名音楽家の方々と比較するなんておこがましいにも程がありますので、ここは諸先輩方のアドバイスに素直に従うことに致します。

 

 ネットの検索サイトを開きながら「イギリスはウィーン程ではなくても、一応、クラシック音楽は盛んなんだから直ぐに色々な先生達が見つかる筈。」と何も考えずに検索をかけます。


 直ぐに我が家から4キロ四方で20人くらいの先生が見つかりました(やっぱり簡単!)。音大卒の先生が2人しかいなかったのには正直とても驚きましたが、「ま、小さな子供でも優しく教えていただける先生であれば…」と余り気にも留めませんでした。音大卒以外の先生は『ABRSM(英国王立音楽検定)グレード8に合格しています』という方や、『グレード5まで合格しています。』という先生の方々。どうやらこの『英国王立音楽検定』なるものが先生の格付けになっている様子。


 私はこの『英国王立音楽検定 グレード8合格』というレベルがどれほどの物か知りませんでした。日本の大手ピアノメーカーが展開している『グレード』に相当するようなものであるとは想像がつきます。調べてみると、そこには


『グレード8:英国の音楽大学入試にも匹敵する上級レベルです。このグレードでは演奏テクニックを身につけていることが前提とされ、より高い音楽性と演奏表現が重視されます。(参照:公益財団法人かけはし芸術文化振興財団 HPより)』


 なるほど。音大入試に匹敵するレベルということは、小さな子、しかも初心者を教える分には問題ないレベルということなのですね。


 その時はその様に解釈&納得し、グレード合格者の先生方も視野に入れてピアノの先生探しをしていたのですが、後に、これは恐ろしい間違いであったと気付くのでした。そのお話はまた後日…


 『先生探しのタスク』は意外なことに大変難航しました。広告を出しているピアノの先生方のリストを作成し、張り切って最初に見つけた20名の先生全てにメールを送信しました。


「当方5歳の子供の母親です。初めてピアノを習わせようと思っております。広告を拝見しまして、レッスンを是非お願いできればと思っております。体験レッスンの様なものがありますでしょうか?」等々、出来るだけ丁寧にお伺いをしたつもりでしたが、2週間たっても誰一人として返信してくれる先生はいらっしゃいません。


 えっ、どうして?


 「メールの調子が悪くて送信できていなかったのかも」「いや、聞き方が失礼だったのかな?」と文章を推敲し再送してもなしのつぶて。「これはいくらなんでも変だ。ひょっとすると検索サイトに記載されていたピアノの先生のリストが古かったのかも。」と、心配になり、それならば…と直接電話をすることにしました。

 

 電話は問題なく通じたのですが、そこで驚くようなことを多くの先生から耳にしました。


 5歳じゃ早過ぎます。きっと15分も座ってられないのではないでしょうか?指もまだまだしっかりしていないかもしれませんね。6・7歳になったらまた是非ご連絡下さい」

 

 え?


 日本であれば2・3歳からでも始められる音楽教室はたくさんあるし、7歳からピアノを始めるとなれば、かなり遅いスタートの部類に入るのではないのではないかと、正直に言えばとても不安に感じました。別に『早くスタートして音大を狙う!』という目標があった訳では全くないのですが、ただ、自分も4歳からピアノを始めましたが、ピアノブーム真っただ中のその当時は、4歳になるより前に既にピアノを始めていたクラスメートも多かったと記憶しています。


「あれ?xxちゃん(私の名前)は、ま~だその曲しているんだ。私は去年の発表会で弾いたよ!」


と、無邪気に…しかも結構残酷なことをお友達に言われ、かなり凹んだ記憶が鮮明に蘇ります。世界的に著名なピアニストも皆さん口を揃えて「早いに越したことはない。私は2歳半から始めました」なんて仰っていらっしゃいますし、『早いうちからピアノを始めることで、ピアノ演奏に適した筋肉や柔軟性を手や腕などに付ける必要がある』という理論は、『これ常識』として、長年、私の頭の中で鎮座ましましており、5歳半でも遅いと思っていた矢先に電話口で


 5歳なんて15分ぽっちも座ってられないだろうから7歳になったら来い(私の頭の中では、かなり違ったニュアンスとして絶賛急成長中)

と聞こえ、

ree
 →(つまりそれが意味することは…)おととい来やがれ!

と、先生の言葉が私の頭の中で着地…。


だから先生方から返信がなかったのでしょう。しかも20人全員からシカトされてしまったのです… そりゃ我が子は、はっきり言って、そんなに所謂『出来た子』ではありませんが、逢ったこともないのにそう決めつけるのは酷すぎる…(涙)


 今、翻って考えれば、ネット登録のシステムそのものが現在の様に確立していなかったかなり昔の話ですし、偶然、先生全員がそんなに登録サイトをマメにチェックする方ではなかったので返信が遅れたのかもしれません。もしかすると、レッスン枠の空きがなかったので、そうやんわりとお断りされたのかもしれません。


 ただ、残念なことに、当時の私にはその様に寛容に考える心の余裕はなく、瞬間湯沸かし器の如く怒髪天を突いた私は、受話器を置いた後、「そんな先生、こっちからお断りだ!先生がいないなら私が教える!ピアニストを目指すつもりはサラサラないんだから(ま、目指せないですし。笑)楽譜を読むくらいの基本は私でも出来る!」と啖呵を切り、当初のポリシー『自分の子供にピアノを教えてはいけない』はどこへやら… 取り敢えず自分で教えることとなりました。


 早速街に出て、古本屋さんの様な佇まいの情緒溢れる楽譜屋さんに行き、「イギリスで一番人気の、子供用のピアノ入門用の楽譜を下さい」と聞いて楽譜を購入。スタッフの方のお話だと、この教本はイギリスの多くのリトルピアニスト達が手に取るそうで…云々かんぬん。


ree

ただ、その非常に由緒正しい手引書は、どこかの旅行パンフレットかと見紛う程にペラッペラで、しかも可愛らしい挿絵の方が音符よりも多く、泣く子も黙る『赤&黄バイエル』で育った私は絶句。


 『まるで歯医者さんに置いてある絵本みたい・・・』



 楽譜の真ん中辺りから片手でメリーさんの羊を弾き、そのレベルが楽譜の最後の方まで続く。最後の辺りでやっと左手投入。しかも左右の指のポジションは固定のまま…

 「薄い本とは言え、ちょっとその『右手だけ』レベルを引っ張りすぎでは?この本がすんだらどうすればいいの?」


 かくして、まともなピアノの先生も、まともな教本として使えるような楽譜も、まともなピアノも『無いない尽くし』で我が子のピアノレッスンはスタートしたのでした。

関連記事

すべて表示
子供が「ピアノやめたい」と言った日

「ピアノやめたい」「練習したくない」と、我が子から初めて聞いた日のショックはなかなか忘れられるようなものではありません。「どうして?」「こんなに上手なのに勿体ない!」と、「どうやったらこの【ピアノやめます宣言】を撤回させることが出来るのか?」という事を一日中グルグルと考えて...

 
 
 

コメント


新着ブログが更新されました際にご連絡させていただきますので、宜しければ新着通知登録をお願い致します!

Black on White.png

ご登録有難うございました!

bottom of page