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【見出して貰う】子供のピアノのスポンサーを探す方法

 どれだけ実力があっても有力者に見出して貰わなければ次のステージに進むことはできません。音大教授、ピアニスト、指揮者、地元のメディア関係者、作曲家、オーケストラ関係者、地元の有力者(「パトロン」と呼ばれ、教育費や財政援助をして下さる方)… 色々な場面で出会う方々にサポートをして頂くことが出来れば、その後の音楽活動を確実に広げていくことが可能となります。でもそんな方達とは「どこで」「どうやって」出会うことが出来るのでしょうか。


 色々な出会いがあるため「これだけすればいい」というものはありませんが、ここではほんの数例ではありますが、実際に私達が実行した方法をご紹介させていただきます。


 我が子「モーたん」は人前で演奏することが大好きでしたが、コンサートピアニストになるなど「そんな大それたこと!」という感じで、本人も家族もプロのピアニストになれるなんて全く思っていませんでした。でもピアノのコンサートに行くたびに「1回でいいから舞台に立ってコンサートができたらいいなぁ~」と言う我が子。


 口では何と言おうと実はピアニストになりたくて毎日頑張って練習をしているのは親からすれば火を見るよりも明らか。それでも音楽学校にいる多くの優秀な生徒達を知っている為、「きっと自分には才能も望みもない」と、幼いながらに半分夢を諦めている我が子がとても不憫でした。


 子供が頑張っているのであれば何としてでもサポートしてやろうと思うのが親心。コンサートプロデュースの経験も、音楽界のコネも全くないながらも考えに考え、「わらしべ長者方式で何とか我が子も人前で演奏できるようなチャンスを手繰り寄せられないものか?」という無謀な考えに辿り着きました。


 そう、わらしべ長者。日本太古の『ザ・サクセス🌟物々交換』。


先ずはちょっとした「きっかけ/コネ」を手に入れて、そこからドンドンそのコネを伝って最終的にはソリストとしてコンサートに呼んでいただけるようなチャンスを手に入れることはできないだろうか…

 そんな夢を叶える為の第一歩として、先ずはモーたんと二人で作った不文律があります。

  1. お座敷がかかったら絶対に断らない

  2. お座敷がかからなければ自分で作る

 ここから「わらしべ長者モーたん編」が始まりました。


 

 1)学校で「特攻」

  音楽学校に通っていたモーたん。当時8歳。

休み時間になると数百人からなる生徒さんは大忙しで「民族大移動」よろしく次の教室に移動します。移動したら先生がいらっしゃるまでお友達とヒソヒソおしゃべりをしながら静かに待っています。そんな僅か5分くらいの間隙を突いてモーたんは「どっきりカメラ」の如く先生がまだ来ていない教室にランダムに乱入。そしていきなりピアノ演奏開始。度肝を抜かれた上級生の皆さんはこの小さい侵入者を止めることも出来ず「誰これ…」と絶句したままドン引きで演奏を聞いていたそうです。(因みにモーたんは『ピカピカの一年生で一番味噌っかす』)

 暫くすると先生が入ってきますが、多くの場合は取り敢えず演奏が済むまで待ってくれ、そして勿論、拍手喝采……ではなく、


 教室から摘まみだされます


 それでもめげずに毎週この「特攻」を繰り返したそうです。実は当時この話を私は全く知りませんでした。後で聞いて本当に青ざめました…


 同じような「特攻」は通っていた小学校でも繰り返されます。お昼休みに体育館に行き、そこで勝手にピアノの練習。体育館は皆が食事をするところでもあったのでほぼ「ピアノ・テロ」。有無を言わせずその場にいる全員に聞かせまくります。また、朝礼や全校集会後にちょっと時間が余ればサッと手を挙げて

先生~ 時間余っているんですか? 繋ぎに一曲いかがですか?

 と、まるで昭和時代の「流し」のギタリストの様に怪しい笑みを浮かべて舞台に近づきます。校長先生も「生徒の自主性を重んじる」と言っていた手前、この低学年の子の申し出を断れなかったとか…。

 これって「自主性」ですかね?「ソフトな押し売り」の方が近いかもしれませんね。


 ところが、こうやって毎回「1曲いかがですか?」を繰り返したことで、「他の子達にもピアノを習う良いきっかけになった」と思っていただけたようです。暫くすると先生達の方からバザーだとか卒業式、学習発表会など「お座敷」を作って呼んでもらえるようになりました。また、教育委員会の視察があった時には「我が校では音楽に非常に力を入れています!」というデモンストレーションの為、議員の方や委員会の方の前で模範演奏をしたそうです。その演奏がきっかけかどうかは分かりませんが、その後「市から特別予算が下りた」ということで学校に新品のアップライトピアノが届きました。当時自宅に電子ピアノしかなかったモーたんは、その後学校でアップライトで練習できるようになりました。



 2)大道芸

 音楽学校に通う為に利用していたロンドンの大きな駅にはボロッボロではありますがアップライトのピアノがいくつかコンコースに設置してありました。そこはヨーロッパ特急列車の発着駅でもある為、多くの人達が行きかいます。そう…


聴衆には不自由しない好条件!しかも乗車ゲートに並んでいる人達は逃げられない!

『お座敷がかからなければ作る』と約束したモーたんは毎週朝と夕方、そのピアノの前を通りかかる度に3曲ほど演奏をしました。今度コンクールで弾く曲、クリスマス等には季節の曲をアレンジしたメドレー、ヒットしている映画の主題歌…(←クラシック、ジャズ、ポップス、国歌まで幅広いレパートリーがございます)


目標:『忙しい人達の足を止めて音楽を聞いてもらう』 


 余り人が集まらない週があれば、次の週には曲目を変えてみたりと本人なりに工夫をしていたようです。例えば「熊蜂の飛行(ま、熊蜂というよりはテントウムシくらいのスピードでしたが…💦)」の様な派手(?…本来のスピードで弾ければ確かにド派手ですが)な曲を「掴み」で持ってきたりと、兎に角「忙しい人の足を止める!」ことに全身全霊をかけて演奏をしていました。


 よく考えると物凄く迷惑…💦


 何か月かが過ぎた頃、「君の先生は誰?連絡先もらえる?」「どこの音楽学校行っているの?」「このお金でお菓子でも買って(約300円貰った!)」と、声をかけてもらえるようになりました。そしてついに…

私はXXという慈善団体で音楽家を目指す子供達の支援を行っているのですが、支援を受ける為のオーディションを定期的に行っています。何かあったらここに連絡を

と、名刺をくださった紳士の方が現れ、二人でガッツポーズ!


 こちらにはその後奨学金を貰う為のオーディションを受ける為に早速連絡を取りました。



3)サマースクールやマスタークラスに参加

 夏休みにはサマースクールに参加したこともあります。そのスクールには著名なコンサートピアニストが世界中から講師として招かれるのでとても有名でした。「コネ募集中」と書いた紙を額に貼って歩いている状態のモーたんは、教えていただくピアニストの先生方に認めてもらえるように、コンクールに参加する時よりも気合を入れて曲を準備して臨みました。


 レッスンを受けた雰囲気で「教え方が上手だなぁ~」と感じたピアニストの方に「もっと色々教えて頂きたいのですが…」とモーたんが恐る恐る切り出すと、驚くほど気軽に


  • 「弟子は今とっていないけど、不定期でいいなら教えてあげるから自宅に来なさい」

  • 「NYにいるからなかなか直接は教えてあげられないけど、メールで演奏を録画して送ってくれたらオンラインでレッスンしてあげるよ」

  • 「XXという音楽院で教えているから今度遊びにおいで」

え?コンサートピアニストってこんなに簡単に「教えてあげるよ!」って言ってくれるの?

と、逆カルチャーショックを受け呆然…

しかももっとショックを受けたのが、実際にレッスンを受けた時に

誰もレッスン代を受け取ってくれなかったこと

 しかも「どこの音楽学校に行っているの?」「先生は誰?」と、ちゃんとした音楽教育を受けているかどうかをしきりに気にしてくれ、「もし学校や先生を探しているのであれば紹介してあげるよ」と信じられないくらい親身になって下さいました。そういう後進の育成に熱心な方々だから、忙しいスケジュールの合間を縫ってまでも有名なサマースクールで教鞭をとっていらっしゃるのでしょうね。


 因みにこのサマースクールに参加したことでご縁がありレッスンを受けることが出来たコンサートピアニストの方々のことは、その後コンクールやコンサートの「経歴書&自己PR」の欄で触れることが出来たりしたので、これがかなり


「水戸黄門の印籠効果」が凄い


 別にモーたんはそのピアニストの方々の門下に入れてもらったわけでも、認められてデビューが決まった訳でもないのですが、一般的にはそんなに簡単に著名ピアニストからレッスンをしてもらえるとは思われていないので(私達も全く知りませんでしたし)、それだけでも泣く子も黙るその権威と威力。その後コンサートのお話が出たり、プロモーションをして回った際に「おおお…それなら実力バッチリですね!」とコンサートを企画される方の安心材料となったようです。




4)コンクールに参加する

 コンクールに参加する目的は色々ありますが、やはり入賞して「第一人者にお墨付きをもらう」というのは非常に大きなメリットですし、大きなコンクールであれば副賞としてソロコンサートを開催して戴けたり、オーケストラと競演できる機会を戴けることもあるので、「コンクール参加」は一番分かりやすい演奏機会を作る方法でもあるかと思います。


 ただそうそう思い通りに簡単にはいかないのが残念な点です。入賞だけでも大変なのに、コンクールの機会を戴けるとなると、まず優勝有りきとなってしまいます。という訳で、優勝が出来なかった場合でも何らかの将来的なチャンスに繋がる様に色々考えました。


 コンクールによっては講評を頂けることもあります。この時、講評をして下さった審査員の先生のお名前が書いてあり、加えて(これが一番重要なのですが)「(お世辞ではなく)演奏をかなり評価して下さっている」と感じた場合には、コンクールが終わった直後に廊下やロビーなどで審査員の方を出待ちするなどして積極的に話しに行きました。(←ほぼストーカー疑惑)


 モ:「XXXを演奏したモーたんです。ご講評有難うございました。大変参考になりました!」

 審査員:「あ、あの曲を弾いた子だね。あれは面白い曲だったね。難しかったでしょう」

 モ:「本当に大変でもう一年以上練習しています」

 審査員:「学校はどこ?先生は?」

 モ:「王立音楽大学ジュニアです」

 審査員:「え?そうなんだ!じゃ、XX先生知ってる?」


 ‥‥となることもあり、そうなるとその翌週くらいに音楽学校に行くとその話がちゃんとお話に出た先生に伝わっていて、双方から「覚えめでたくなる」という相乗効果もあります。「だからなんだ」という様に感じられるかもしれませんが、音楽界…特にピアノ界はとても小さい為、知っている先生の名前を10名くらいお互いにあげていけば、大体1名くらいは知り合いがいる…という感じともで言いましょうか。そうやってお互いの共通の知人に絡めて関係を作っておくと、1・2年後くらいに意外なところから連絡が入り「新作の曲をワールドプレミアで弾いてくれる?」「1時間くらい演奏が出来るピアニストを探している」「伴奏者を大至急」という話が舞い込むこともありました(大体結構面倒臭いどころかメチャメチャ練習を強いられるものが多い)。そう、例えメチャクチャ大変だとしてもここでも大切なのは最初にお話をした不文律の


 お座敷がかかったら絶対に断らない


ということ。そういったことを着実にこなして信頼を得る(若しくは「便利屋」としての地位を確固たるものにする)ことが出来れば、「今度のコンサートのピアニスト探しているんだけど、どう?」という話に繋がることもあります。



5)知り合い全員に子供のピアノのことを話しまくる

 これは結構勇気もいりますし、言い方やコミュニケーションの取り方を間違えれば大切な友人を失くしてしまうかもしれませんが、とにかく


  •  一族郎党、勤務先の同僚、隣近所、同級生、ママ友、袖振り合ったくらいの知り合い全員に子供のピアノのことを話し、

  • 興味がありそうであれば発表会などにお誘いし、

  • 我が子はどれくらい才能に溢れているかを多少盛ってもいいからお話をし、

  • その方々のゴシップネットワークに乗せてもらう


大袈裟に言うのは嫌

自慢げに自身の子供の話を他の人達にするのは気が引ける

無理強いはしたくない

プライベートなことを話すつもりはない


 色々な意見もあるかと思います。私もお薦めしてはいるものの、実はこういう類の話は本当に苦手です。ですが本当にチャンスを掴みたいのであれば、先ずはここから始めなければなりません。


 モーたんは12歳の時に最初のピアノコンチェルトの話が来たのですが、これは私が勤務先の同僚を家に招待したことが始まりでした。モーたん(当時8歳)はその時たまたまピアノの練習をしており、同僚はモーたんに話しかけました。


「ピアノ一生懸命練習しているんだってね。何か聞かせてよ」


モーたんが演奏したのは音楽学校のオーディションで弾く為に1年くらい練習していたショパンのヘ短調のエチュード。「上手だね!」ととても褒めてくれた同僚はその話をあちこちで話すうちにとてつもない話になって人々に伝わっていきました。


 8歳でラフマニノフのエチュードを簡単に演奏する物凄い神童がいる


 その都市伝説の様な話がある指揮者の耳に入りました。それから4年後に今まで演奏していたソリストが他の都市移動してしまい、その穴埋めに…と、モーたんにソリストの依頼が舞い込んだのです。実力も分からないのですから、普通はオーディションとかある筈なのですが、


 そんなものいらないよ。噂は色々聞いているよ!


 と物凄い自信。それもこれもたった一人の知り合いが振れまわってくれた数年前の「盛り盛りエピソード」が作り上げたチャンスでした。



6)何か演奏機会を得ることが出来たら地元メディアに売り込む

 これは小さなお子さん程有効なのですが、例えば規模はさておきコンサートをすることが決まったとします。ジョイントコンサートでも短いものでも構いませんし、「この歳でこんなコンサートを開催するなんて凄いね!」という、何か「映える演奏機会」があればOKです。


 これを地元の新聞、ラジオ、テレビ、雑誌、掲示板…とにかく手当たり次第に「X歳の子が演奏します。これは凄いことです。どうか取材に来て下さい」と周知して回ります。メール、電話、手紙、伝書鳩、モールス信号…本当にもう手当たり次第に広告しました(笑)。嘘はいけませんが、大袈裟に言うのは許される範囲であれば大丈夫だと思います。歳が一桁~二桁前半の時ですと「それは凄い!」と世間一般に思ってもらいやすいので、モーたんの様に大人になるまでにデビューをしてピアニスト活動を希望される方にはこういう売り込み方は有効だと思います。 


 この中の1つのメディアからだけでも取材をして頂けると、上手く利用すればそれもまた「経歴書」に箔をつけることが可能です。キャリアがまだないうちは、やはりこういった公共の媒体から取材をされるということは「それはそれだけその子に取材バリューがあるからだ」と周りに思っていただけるので、後に自分を売り込むときの良いツールになります。


 モーたんの場合はピアノコンチェルトの演奏が決まった際に、そのコンサートの宣伝も兼ね、地元の国営放送(日本でいえばNHKのローカル局)のラジオに招待され、そこでそのオケの指揮者の方と一緒に20分程インタビューを受けました。このインタビューの為に30ヵ所くらい連絡を取りましたが成功したのはここだけ!それでもやった甲斐は充分ありました。私が宣伝して回ったのはこの時だけでしたが、その後は地元のライターの方が「コラム」としてモーたんが地元でコンサートを開催するたびに講評を書いて地方紙に掲載して下さいました。ロンドンのような大都市であればこの様なことは相当な神童でなければ起きないと思うのですが、田舎町ですとこういう点に関しては手厚いですねぇ~。田舎で本当に良かったです! 


 

 「モーたんはとてもラッキーだ。小さなうちからコンサートピアニストとしてのオファーが舞い込んでくるんだから」と周りからよく言われました。私達も本当にその点に関してはそうだと思いますし、先生を始め周りの方々のサポートにはいつもいつも心から感謝しています。


 でもそれとは別に誤解を恐れずに言えば、モーたんの「コンサートピアニストになりたい!」という小さい時から変わらぬ情熱がこういったチャンスを引き寄せた点もあったかもしれないのもきっと真実でしょう。


 いつお声がかかっても大丈夫なように与えられた練習以外にも「お座敷用」曲に時間を取り、常に2~30分くらいのレパートリーを用意していて「お座敷がかかれば断らない」を実践していました。人前で演奏する練習を数多く経験していたからこそ、思いがけないミスやピアノの不具合にも対処でき、その小さな成功が更なるチャンスを生み出してきているのだと感じます。


 「運」はある程度は引き寄せることが出来ます!そう信じて前進あるのみですね!(笑)












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