top of page

ピアノコンクールで上位入賞する方法:④選曲 【その4】

※『④選曲』はシリーズになっておりますので、宜しければ④【その1】からお読みください



ご注意:以下でお話させていただきますことは、お子様のピアノの先生が「ご家庭で選ばれた曲」をレッスンで指導してくださることが前提となっております。どうかご了承ください。


コンクール用の曲を探す方法:中学入学前編


5.我が家で実践した曲選びの方法


 選曲はコンクール選びと同じくらい重要な勝つための要因と言われていますが、いざ実際に選ぶとなるととても難しく、加えて時間がかかる作業ということは言うまでもありません。ご教示いただいている先生から「この曲はどうかしら?」と楽譜を渡され、それがドンピシャ!で子供も喜んで熱心に練習して最終的に良い結果に繋がることもあれば、「この曲どうかなぁ~… 早くマル貰って次の曲に進めないかなぁ~」と、最初から余り気が乗らなかったりすることもあります。演奏するご本人様が気が進まない曲であれば(特にまだ小さい時は)練習にも身が入らないかもしれませんし、仮に親御さんがなだめすかせながら無理矢理練習させても良い結果に繋がることは少ないでしょう。


 当たり前と言えば当たり前なのですが、ピアノは演奏者のその曲に対する心から湧き出る想いを指先で表現する芸術なので、「嫌いでも何でもいいから弾きなさい!」というように、ピーマン嫌いの子に無理やりピーマンを食べさせる様な方法が通用する筈もありません。結論としてコンクール用の曲選びで大切なことはお子さんが「弾きたい!」と思うを選ぶことだと思います。稀に弾いているうちに好きになることもありますが、そんな運を天に任せる様なイチかバチかの賭けをコンクールの選曲ですることはできません…(…と言いながら、何度も「それ」をやってしまった経験者が偉そうなことは言えません…💦)。


  コンクールで勝つための曲選びの方法は色々あると思います。我が子「モーたん」の場合は、先ず様々な発表会、コンクールやコンサートへ出向き、そこでモーたんよりも2つくらい年齢が上の子供さんの演奏を聴いて回り、気に入った曲があればその曲をネットなどで探しました。聴いて回る際にはその演奏が入賞したかどうかという結果は余り関係なく…(とはいうものの、やはり度肝を抜かれるような素晴らしい演奏の曲を選んでしまうものですが…笑)「モーたんは技術的にこの曲を演奏することが出来るか。我が子のピアノ演奏の長所を生かすことが出来るか」と考えながら選んでいました。(※この「我が子のピアノ演奏の長所生かすことが出来る曲」かどうかというお話はブログの④選曲【その2】に詳細を記載しております


 なぜ我が子よりも年齢が2歳くらい上の子供さんの演奏から選曲したかという理由なのですが、皆さんはコンサートピアニストの演奏を聴いて「これ素敵な曲だからウチの子も弾けないかな?」と思われた経験はないでしょうか? プロが弾いていると簡単に聞こえますが、実際にいざ練習を始めると「楽譜は買ったんだけどね…」「手が小さすぎて届かない」「表現力が追い付かない…」という様に小さな子供向きの曲ではなかった…という経験がおありの方もいらっしゃるかもしれません。私は特にご贔屓のコンサートピアニストが弾く曲の楽譜を片っ端から持ってきて「ああ…また弾けそうもない…」と血迷ったことを繰り返しておりました。巻き込まれる子供も悲惨です。ということで最終的にはそんな私も「やはり同じ『子供』であるピアニストさん達の演奏を参考にするのが無難だ」ということ落ち着きました。同じ子供とは言えコンクールに参加されている非常に優秀な子供さんの演奏です。小学生時代に2つほど学年が違えば驚くほどレベルが違います。結果として「2つ上のお子さんが演奏されている曲を1年後に同じくらいのレベルで演奏出来たとすれば、それは充分に勝負曲になる筈!」…と、まぁそんな期待と願望…そして欲に塗れた単純な理由です(笑)


 探し始めると目移りするほど色々な曲があります。


聴かせる系
技巧系
プログラムのオープニングやフィナーレに最適な曲

特に、思わず「これイイ!」と、つい選んでしまいがちだったのは

演奏中に(特に演奏開始時に)観客からどよめきが起こった曲
演奏後に『ブラボー』が飛んだ曲(笑)

 実際に演奏会場で曲を探しますとこういった聴衆の反応も分かり、ホールで演奏した場合に【映える】曲を見つけることが出来ます。こうやって集めた勝負曲候補がある程度になった時点で子供と一緒に曲を聴き、ピアニストさんご本人が気に入れば楽譜を入手して取り敢えず流して最後まで弾いてみていただきます。この段階ではまともに弾けるわけもないのですが、コンクール開催時期や確保できそうな練習期間などの条件を考慮し、締め切りまでに何とかなりそうかどうかを判断していきます。その中で「これが1・2年後の勝負曲になる!」と確信が持てたら本気で練習を始めます。


 モーたんもそういった勝負曲を長期間練習することが何度もありました。勿論その曲だけを練習していたわけではありませんでしたし、その様な難易度の高い曲だけをコンクールに持っていくわけでもありませんでした。(それはそれで入賞し辛くなってしまうようです)ただ、「後2年待てば3か月もあれば弾けるようになる」曲を、前倒しで数か月~1年かけて弾くわけです。一般的には2~3週間以内で弾けない曲であればそれは今弾くべきレベルの曲ではないと言われるので、様々なジャンルの曲を幅広く&数多く練習しなければらなないピアノの技術が一番伸びる非常に大切な時期に、「貴重な時間の多くがたった数曲の練習の為に費やされる」のは、確かに「時間の無駄」かもしれません。「まだ遊びたい盛りの子供に長時間のピアノの練習を課すのはやり過ぎ」と非難されても仕方がないかもしれません。また「先ずはコンクールありき」的な方法で曲を選ぶことは芸術としてのピアノ演奏の在り方を完全にはき違えたものであるのかもしれません。


 それでも…それでもです。審査員は審査用紙を持ってはいますが『聴衆』です。「コンクール」という体を成してはいても、実際はコンサートと同じで「聴衆ありき」で存在するのであれば、その聴衆を自分の持っている技術の全てを総動員して感動させるという意味では双方は同じと考えます。『コンクールの定番曲』を安易にコンクールに持ち込むのではなく、やはり聴き手が吸い込まれるような魅力があり、加えて演奏家本人の個性を最大限に発揮できる曲を探すのは百戦錬磨の手強い聴衆である審査員の印象に残る演奏をするという点においても重要だと思っています。


 勿論上記の様な勝負曲の探し方はYoutubeなどの動画サイトを用いても出来ます。特に小さなお子さんですと「x歳」と動画に記載があることも多いので、「5歳、ピアノ」と検索すると数多くの動画がヒットします。「5歳だとこれくらいの曲でも指が届くんだな」「これはペダルを使わなくていい曲なんだな」「これは曲自体が泣いてくれる曲だな(美しい旋律の曲でメロディーだけで人を感動に導くような曲)」等々、まだ身体が小さな時にありがちな身体的な条件をクリアする参考にもなりとても便利です。



コンクール用の曲を探す方法:中学入学以降編


 中学生ともなると、コンクール参加者のレベルの差は小学生カテゴリー当時と比べて更に開いてくる傾向があるように感じます。レベルもそうですが体格も「大人と子供」くらいに顕著な差が出てくることもあります。当否は別として、ピアノに関して世間一般にまことしやかに語られていることとして「小学校時代は女の子の方が体格的にも情緒的な表現力でも優位だったのに、中学生くらいになると男の子が台頭してきて勢力分布図が書き換えられる時期になる」…というものがあるようです。実際に中学校以降は、男子ピアニストさん達の豊かな音量と確かな技術に裏打ちされた難易度の高い華麗なプログラムには息を吞むこともしばしば。こうなると、こちらがどれだけ高い技術を持っていても、「手が大きい」「背が高い」など、ライバルの体格的な有利さの前に涙を呑むケースも出てきます。勿論男の子だけがそういう訳ではありませんが、女の子でも上位に来る方々は皆さん音量の豊かな方ゴロゴロ状態になってきます。


 ホールの隅々にまでピアニッシモの音が届かなければ点数が伸びなくなる非情なシーズン到来です。

 数年前、何人かのコンクール審査常連の音大教授やピアニストの方に「中学時代からの演奏に対する審査基準」を伺ったところ


その子の演奏をお金を払って聴きに行きたいかどうか

 だと言われました。つまりこの辺りのカテゴリーから「上手に弾けている=高得点」というよりも、「演奏家として魅力的かどうか」という判断基準に変化していくということなのですね。コンクールの演奏時間も小学生の時よりも長めになる傾向があるので、プログラムの組み方に関しても工夫もせず「今までにレッスンで習った曲を並べました」的なプログラムでは予選通過も難しくなってくるようです。


オープニングで聴衆を掴み、最後の曲で聴衆を沸かす

 …プログラムにもそんな「どうだ!」というパフォーマンスが散見されるようになり、審査員の方々が思わず「そんな曲ステージで弾くなんて勇気あるね(笑)」とコメントしてしまうような怖いもの知らずな難易度の高い曲も並ぶようになります。それまで「技巧的な曲は余り好きではない」と言っていたピアニストさん達も、この時期辺りから技巧的な曲を選曲せずに入賞を狙う為には、参加するコンクールの見直しを余儀なくされるかもしれません。


 コンクールで溜息が出るほど美しい音色で聴衆を魅了し「この子が優勝だ!」と、その場にいた多くの人が確信した後、高難易度の曲を引っ提げて舞台に上がったピアニストさんが勝ちをさらってしまった…ということを今までに何度も経験しました。「美しい音色」というのはピアニストにとっては究極の目標ですし、これを得るために日々練習に明け暮れるのですが、「残念ながらその努力と技術の高さを正当に評価してくれるのはピアノ経験者のみです」とモーたんの先生はいつもお仰っていました。


 一方、街中でストリートピアノなどで演奏する場合「世界最高速で弾く幻想即興曲」を弾く方が「トロイメライ」を弾くよりも拍手喝采で称賛される…ということがままあります。ま、これは、私は弾きたくてもそんなに速く弾けないのでかなり妬みが入っている私見なのですが…(笑)


 一般論として技巧的な曲の方が「わぁ~」と思いますし、「こんなに音符がいっぱいの曲をこんなに速く弾けて凄い!指が早過ぎて見えないよ!」となりますし…

 

 技巧的な曲の難易度はアマチュアでも分かりやすいですよね!


 つまり「どちらが上手い」ということではなく、「聴衆として見た場合、どちらが素人に真似できないような技術を持っていると判断されるか」という意味なのではと愚考します。コンサートに足を運ぶ方々はプロのピアニストやピアノ経験者だけではありません。その多くはピアノに関しては私も含めて「アマチュア」です。その人達にピアノの魅力を余すところなく伝え、作曲家がその作品を通して聴衆に伝えたかった思いを伝える為の「伝道者」としての役割を担っているのがコンサートピアニスト。中学生・高校生と年齢が上がれば上がるほど、この「コミュニケーター」としての役割を評価されるため、レパートリーの幅が限られていて同じような曲を羅列しているピアニストは「コミュニケーターとしての技量に限界がある」ということで入賞が出来なくなってしまうということなのでしょうか。


 結論として、歌うような美しい曲も、超絶技巧の曲も、双方弾けることを証明する為にプログラムに入れてコンクールに望むことが期待されるのが中学生以降のカテゴリーということになるかと思います。



6.我が家で実践した曲選びの方法

 

 かなり脱線してしまいました…💦


 ということで、では具体的な選曲ですが、上記で申し上げました「技巧的な曲」「メロディーラインの美しい曲」をどちらも最低1曲はプログラムに入れることは必須ですが、それ以外のポイントとしては…


  • 軽快でコミカルな曲は評価が高い:ユーモアに溢れた曲をコミカルに弾くことは想像以上に難しい為、成功すれば評価が高くなる傾向にあるようです。逆に「ユーモラス」などと表題に書いてある曲でユーモアたっぷりに演奏できなかった場合は厳しい評価がくだります。


  • (審査員の情報が事前にわかる場合は)審査員の専門分野以外の曲を選曲する:審査員が複数いるのであれば「惨劇」は避けられるかもしれませんが、審査委員長なんかだったりすると一瞬で撃沈される可能性もあります。


  • バッハ、ショパン、ベートーヴェンは避ける:これらの曲は審査員自身が今までに演奏している可能性が高く、また「ペダルを踏む・踏まない」「ルバート」「ソナタに関する解釈」など個人的な好みや見解など主観的要素が多く含まれており直接点数に響くことが多い為避けられるのであれば避けた方が無難な場合もあります。勿論自信があれば別です。


  • 一般的に非常によく知られている曲や、タイトル(ニックネーム)が付いている曲は避ける:審査員が過去何度も同じ曲を聴いている可能性が高く『意外性』『オリジナリティー』という高得点につながるポイントが得られない為なるべく避けた方が良いかもしれません。また、ピアノの巨匠が録音した名演奏が多く存在しますので、コンクールの参加者と戦う以前に、その伝説の巨匠達の演奏に立ち向かっていかなくてはならず、かなり不利な戦いになってしまうかもしれません。勿論名匠以上の演奏をした場合、非常に高いポイントをたった1曲で稼ぐことも可能です。(例:ラフマニノフ「鐘」、リスト「ラ・カンパネラ」、ショパン「革命・黒鍵・木枯らし」等)


  • 演奏時間が4~6分の物を選ぶ:直接これはコンクールには関係しませんが、中学生以降に手の内に入れた曲の殆どは生涯を通してコンクールに、コンサートに…と、繰り返し演奏機会のあるレパートリーとなる可能性が高いと思われます。その為4~6分という演奏時間内の曲を数多く持っておくと、後にコンサートピアニストとして活動をする場合に汎用性が高くなります。


  • 高難易度の曲にこだわらない:「超絶技巧系の曲をコンクールで弾く」という血の滲むような努力に対しての「ご褒美」的な追加点は全くありません。高く評価されるのは、その曲が完璧に弾けた場合のみで、逆に失敗すれば目も当てられないような評価を下されることも多いです。技巧的な曲を弾く場合はプロのピアニストと比較して遜色ないレベルにまで仕上がった場合のみにした方が賢明かと思います。


  • 聴衆を「動かす」曲を選曲する:最初の音がつんざくような「爆音」でスタートしたり、感情を揺さぶられる美しい旋律だったり、グリッサンドを多用するなどの派手なアクション満載の曲を演奏した場合、聴衆が「これなんて曲?」とプログラムを見る為に演奏中にゴソゴソ動くことがあります。ユーモラスな曲を弾き終わった時に聴衆から笑いが漏れることもありますし、またラストが聴衆を追い込むような興奮するような曲の場合は「ブラボー!」と会場のあちこちから声が掛かることもあります(これが一か所からですと「身内がやってるな」と思われるので余り効果はないかもしれません。仕込むのであれば「複数人」仕込みましょう!笑)。審査員はそういった聴衆の「動き」を感じ、ピアニストが聴衆を上手くコントロールしているということで演奏に対する評価がグッと上がることがあります。マーケティング戦略で「ハロー効果」と言われるこの様な印象操作を上手く利用することも入賞への近道です。





0件のコメント

関連記事

すべて表示

ピアノコンクールで入賞する方法 : ①

新しいピアノの先生に代わってから1年くらい経ったある日。先生から突然発せられた「今度コンクール受けてみる?」という言葉で舞い上がりました。正確には母親の私が完全に舞い上がり、子供はコンクールという意味がよく分からず、単に人前で演奏をするくらいに思っていたようです。人前で演奏...

ピアノコンクールで入賞する方法: ②コンクール選び

昨今は本当に色々なコンクールがあり、その気になれば毎月の様にあちこちの大なり小なりのコンクールを受けまくることも可能なのでは…と思うほど。教えていただいているピアノの先生からのお薦めであったり、お友達が受けるから一緒に…というものもあったり、参加する動機は色々でしょう。特に...

bottom of page