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小さい子供のピアノの練習時間:ピアニストになる為の練習時間とは?

何時間も子供がピアノの練習するなんて無理!ですが、ピアノを始めたその日から「毎日の時間割」として早い段階で組み込んでしまえば上手くいくかもしれません。我が家のリトルピアニストさんが5歳の時のピアノの練習を巡る親子の攻防をご紹介します。


 我が子「モーたん」は5歳半からピアノを始めました。「ピアノで5歳半は遅い」と周りから言われていましたし、私もそう感じていました。ですが3歳で始めたお子さんと比べた場合、手も身体も大きく、集中力もあり、また楽譜や音符などの記号を覚える等の理論に関しては理解力がある筈なので、そういう点でいえば思うほどのデメリットはなかったように感じます。


 

 以前のブログでお話しました通り、モーたんのピアノの先生が見つけられなかった私は、余り乗り気ではなかったものの、取り敢えず先生が見つかるまでのピンチヒッターとして我が子にピアノを教えることとなりました。


 最初は取り敢えず「バイエル」。今や世界遺産として銀座の大手ピアノメーカーのビルの横に記念碑が立っていても不思議ではないような… そんな昔に人気絶大だったピアノ教則本です。兎に角昔から「理論的にピアノの基礎を学ぶことが出来るがとても退屈」と評価をされていた教則本。そんな本で自身が散々苦しめられたにもかかわらず我が子にも使うなんて…(ヒドイ…) しかもイギリスには売ってなかったものをわざわざ日本からお取り寄せ💛 こんな…言ってしまえばツマラナイ(…ゴホゴホ)本を使って、しかもド素人の私が教えるのですから最初はどうしようかと思いました。


 最初のレッスンは夕食の片付けが終わってちょっと落ち着いた頃。モーたんを椅子に座らせてバイエルの最初のページを開きます。私は即固まりました…


え?何で上のドから導入するの?
何で左手もト音記号で始まるの?しかもからって…

 と、余りにも意外な導入に心の中で突っ込みを入れながら進めます。

誰だ、「バイエル」ってドイツらしく合理的に進むって言ったのは!

 でもこの本しかないし、シカタナイヨネ…(←まだ凝固中)


 ま、最初なので子供と二人でおしゃべりしながら楽しく鍵盤を叩き、ページをドンドンめくっていったら2時間くらい経っていた…という感じ。モーたんも「ピアノを習いたい!」と宣言した直後だったこともあり、「これは何の音?」「どこを弾くの?」「じゃ、この音はきっとここを押すんだね?」「りんご何個分抑えるの?」と、ゲーム感覚で二人とも笑顔で無事最初のレッスン終了!


よっしゃ、何とかなりそう!ヤレバ出来る!

 2日目はやはり夕食が済むとモーたんがピアノの椅子にちょこんと座っていて、「ママ早く!ピアノの時間だよ!」そして、2日目も一気に何ページも進めたので3時間くらい練習しました。(練習というよりは「椅子に座っていた時間」という方が正解の様な曲ばかりでしたが…)


 さて、3週間経ちました。バイエルはやはりそんなに甘くない。ピアノがある程度弾ける方はいざ知らず、始めたばかりの子供が楽譜を見てサーっと初見で弾けるような曲はとっくの昔になくなっているのですが、最初の頃に「1日数曲進む(ま、初期は超短いし簡単ですから)」という感覚があったからか、モーたんは意地でも1日に数曲進むんだと言い張ります。丸が貰えないので泣きながら弾くのですが、音は合っていても長さを正確にカウントしていなければアウト。おっと、レガートも忘れてはいけません!百均で買った可愛い菜箸で電子ピアノの譜面台を叩きながら何度も挑戦します。ここ数日練習が終わるのは午後10時… 約4時間も練習しています。


その時何かが私の脳内に光りました


 この時「あれ?この子は進度が早いなぁ~」と感じていました。実はその時悪戦苦闘していた曲は赤バイエルの最後の曲。私が1年以上(いや、もっとかも…)かかって終えた記憶があるドイツからの外来種「赤バイエル」を約3週間で根絶しようとしていたのです。しかも…


(あんなに退屈な曲の練習を)4時間頑張れる根性

「最後まで完璧に仕上げたい!」というファイティング・スピリット!(←?)

 

 ここで私の【モーたん結構ピアノいけんじゃね?】モードのスイッチが入ってしまいました!


それからは形勢逆転。モーたんも段々難しくなっていく曲に飽きてきて‘1時間くらい練習すると「後は明日ね?」と言うようになります。甘い!そうは問屋が卸さない!


この曲が上手に弾けたらこの飴あげるね
3時間練習したらシール1枚。そのシールを7枚集めるとお小遣いあげるね

と物で釣り、いたいけな幼子にシールを集めさせる「ヤマザキ春のパン祭り」戦法に。 

 毎日一挙に3時間練習するのは段々大変になってきたので朝5時半から幼稚園に行く前に1時間、午後4時に帰ってきてから1時間。そして夕食を食べてから1~2時間を練習に当てるようになっていきます。シールも「果物シリーズ」「動物シリーズ」「お菓子シリーズ」…と、コレクター心をくすぐり「全種類集めたい!」という純粋な子供の気持ちにガソリンを注ぎ、その「意欲の炎」が燃え上がるようなものを数多くご用意。


 この戦法が功を奏した(?)のか、モーたんは20歳になった今でもたまに「楽譜のページの左上に動物シールが見える時がある」…と言っておりました。


…トラウマになっているんじゃ…💦

 もう一匹の強敵独外来種「黄バイエル」もそんなこんなでピアノを始めてから3か月目にはほぼ撃退し、途中で切り上げてブルグミュラーに。そのブルグミュラーも有名どころだけピックアップし、並行してバッハのアンナマグダレーナ…とドンドン続きます。


 ところが、この頃に問題になっていたのは「いつまで物で釣るか?」という点。お菓子やお小遣いが無ければ練習をしない…ということでは非常に困るわけですし、周りからも「それではエサで動物を調教しているのと同じ。」と言われかなり悩んでいました。


 その「物で釣る」戦法の終わりはある日突然訪れます。小学校に入学したモーたん。クラスメイトの女の子が教室の中にあったピアノを弾いたのだそうです。実は数か月前にその子とモーたんが同時にピアノを習い始めたのを知っていた担任の先生は「モーたんも弾いてみない?」と声をかけました。その時にモーたんが暗譜で弾いた曲がブルグミュラーの「貴婦人の乗馬」。その時のクラスメイトからの拍手と歓声がモーたんの心に火をつけたようです。


みんなのね、とっても驚いた顔が面白かった!先生は「オーマイガー!」しか言えなかったんだよ!校長先生も来て何曲も弾いたんだよ!

 その日を境にあれだけ欲しがっていたシールにもお菓子にも全く見向きもせず、1日4時間、小学2年生になる頃には5時間と練習時間はドンドンと増えていきました。学校でも朝礼の後など機会がある度に舞台にあげてもらって全校生徒にピアノを演奏する機会を作ってもらっていたようです。この時から「ピアニストになりたい!」と言っていたので、その目標に向かって必死で頑張って…


 勿論こう書くと全てが平穏無事で、何の苦労もなく毎日ピアノの練習が進んだように感じられるかもしれませんが…

んなことありません

 ピアノ練習初日にリズムをとる為に使った可愛い菜箸は、この頃には百均で購入可能の1番長くて太い箸になり(殆ど太鼓のバチ)、それを使って「違う!!!そんな音じゃないでしょ!!リズムも違うでしょ!!」と私がバンバンと譜面台を叩くので、菜箸の先端が折れてクルクルと飛んで行き「お釈迦」に(合掌)。そのうち箸がなくなり日本の家族に頼んで空輸しなければならない始末。


 モーたんはピアノの練習から逃げ回るようなことはありませんでしたが、涙を溜めて悔しがるのは毎日のお約束。長時間の練習の疲れから集中力が持たず、いい加減な練習が始まれば「オラオラ」とドスの利いた声で脅しまくるチンピラの様な母親に慄くのは日常茶飯事。


 こんな拷問みたいな練習が何時間も続くのに「辞めたい!」と言わなかったのは本当に驚きです。(って、本人が言ってどーするんだという話ですが…笑)


 この二人の関係が最悪になったのは8歳の時に音楽学校のオーディション受験の為に準備をしたベートーヴェンのソナタ「悲愴」の3楽章とショパンのヘ短調のエチュードの練習をしていた頃。この2曲は当時のモーたんの実力では勿論弾きこなせるような曲ではなかったにも関わらず母親に無理やり勧められて練習を開始した曲。しかも初めて1年くらいの長期に渡って猛特訓をした曲となり、


何としてでも音楽学校に入学させたい親

 と、

一体何の為に友達と遊ぶことも出来ずに毎日数時間も同じ曲ばかり練習しなければならないのか全く分からず情緒不安定になってしまったモーたん

 とで毎日の様に対立。


モーたんはピアノの前で泣かない日はなく

私はピアノの練習が終わってから一人ベッドの中で泣かない日はなく


 毎日がとても長く感じ「一体いつまでこんな生活が続くのか」と精神的におかしくなりそうな数年間。本当に長かったです。こういうことは自慢話になりかねないのでママ友などに話すわけにもいかず、家族に言っても「子供が可哀そう!下の子もいるんだからいい加減にしなさい!」と怒られるのが関の山。学校からも「お子さんには子供らしい生活がない。ピアノピアノではダメ。もっとバランスを考えて下さい」と言われるし… 毎日聞こえる心の声は、


可愛い我が子が一生懸命に頑張っているのに、大声で怒鳴るのは理不尽ではないですか?

子供が何か悪いことでもしたのですか?

子供を見て見なさい。毎日の生活は楽しそうですか?


 それでもそんな二人の思いをぐっと堪えながら毎日数時間の練習はモーたんが17歳になるまで続きました。一人で練習を任せられるようになったのが15歳の時。コンサート前などの数週間は週末などは1日10時間以上も練習をしていました。


 モーたんには「楽しい子供時代」はなかったわけですが、それでも本人曰く


人前で弾いて拍手を貰うと「ああ、頑張って良かったな!」としか思わない。いつもママとの練習は楽しかったよ!

もう涙腺崩壊です…





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